新型インフルどう対応 まずマスク、手洗い

■重症化防ぐワクチン リスクあれば早め接種

 今年春にメキシコなどで出現した新型インフルエンザが、冬に向かう北半球で本格的に流行し始めた。日本では夏に沖縄県で本格的な流行が始まり、初の死者が出た後、全国的に感染が広がっている。ほとんどの人は感染しても軽症で治っている。しかし妊婦や慢性疾患のある人、幼児などは重症になる恐れがあるほか、健康な人でも重症になることがある。新型に加えて、季節性インフルエンザも流行する可能性がある。わたしたちはどう立ち向かえばいいのだろうか。
  新型インフルエンザは普通の季節性インフルエンザとどう違うのか。わたしたちの取るべき対策は何か。感染症対策に詳しい東京医科大微生物学講座の松本哲哉主任教授に最新の情報を聞いた。
  「国内のデータを基に考えると、今のところ、新型インフルエンザの病原性は季節性インフルエンザとほとんど同じとみられます。しかし、これは感染者が少ない段階での見方。これまで国内で死者があまり出なかったのは、重症化するリスクの高い人に感染が広がらなかったからです」
  厚生労働省の推計では、患者数は年内に人口の2割、2500万人に達するともみられている。
  「誰も新型に対する免疫を持っていないので、もっと多くなる可能性はある。そうなると、リスクの高い人たちが相当数含まれることになり、死亡率は季節性よりも高くなるかもしれない」
  通常の社会生活を送る人ならいつ感染してもおかしくない状況。どうすれば感染を防げるのか。
  「まず外出を減らせる人は、減らす。電車の車内や職場、学校の教室など密閉された空間で、感染した人と一緒にある程度の時間を過ごすときには、マスク、うがい、手洗いでウイルスから身を守ることが基本です」
  手を洗うときは15秒以上かけて丁寧に洗い、うがいは帰宅時のほか、外出先でも小まめにする。
  ワクチン接種は重症化を防ぐために重要だ。
  「季節性と新型の二つのワクチンがあり、可能なら両方を接種した方がいい」
  新型のワクチンは医療従事者への接種が始まり、11月からは妊婦と持病のある人、その次に小児、年明けには高齢者という順番で接種が進む。
  「接種後、免疫獲得まで2週間以上かかる。迷って接種が遅れると流行に間に合わない。リスクの高い人はかかりつけの医師に相談し、早めに接種する必要があります」
  輸入ワクチンは国内で臨床試験(治験)中で副作用の程度がはっきりしない。「心配な人は情報を見極めて判断する必要があるかもしれません」
  かかったかな、と思ったらどうすればいいのだろう。
  「重症化するリスクが低い人の場合、微熱や少しだるい程度なら、無理に受診せず、自宅で様子を見た方がいい。インフルエンザは風邪と違い、高い熱、強い寒けや倦怠[けんたい]感、筋肉や関節の痛みが特徴的です。抗インフルエンザ薬のタミフルやリレンザはそうした症状が出てから48時間以内に服用しないと、有効性がない。処方してほしい場合は、症状が出て2日以内に受診してください」

■看病と備蓄のポイント … イオン飲料で水分補給 レトルト食品、缶詰など用意

 家族が新型インフルエンザにかかった場合、適切な看病とともに、家庭内での感染拡大を抑えることが重要になる。
  「患者は汗をかき、脱水状態になりやすい。食欲が低下するので塩分摂取も減る。水ではなく、イオン飲料をたっぷり飲んで、電解質を補うことが大事です」と近畿医療福祉大の勝田吉彰教授は強調する。市販の「経口補水液」もいい。
  看病する人は重症化の兆候に気を付けたい。肺炎の場合、「息苦しい」「胸が痛い」「顔色がすごく悪い」などの症状が出るので、すぐに病院に運ぶ必要がある。
  子どもの脳症は、意識障害を軽いうちに見つけるのがポイント。時間や場所、親しい人が分からなくなる「見当識障害」のチェックが役立つ。
  「夜中に起きて学校の支度をする、母親に向かって、先生に対するような口の利き方をするといった場合は、すぐに入院する必要がある。救急隊員には『見当識障害がある』と伝えてください」
  家庭内での感染を防ぐには、(1)看病する人を1人に決める(2)患者は個室に寝かせる(3)ほかの家族は、患者のせきやくしゃみのしぶきを浴びないようにする−が基本だ。
  普段は普通のマスクを着け、患者と接触するときは高性能マスクを着けることを勝田教授は勧める。
  個室が確保できない場合、シャワーカーテンを天井からつって部屋を仕切る。1日数回の換気が望ましいが、難しいなら空気清浄器を使う。
  「発症後は1週間程度、ウイルスが出続ける。ウイルスが付きやすいのは、ドアノブ、障子の引き手、スイッチ、各種のリモコン、調味料のふたなど。ごく普通の消毒液でふけば、大丈夫です」
  食料品や看病に必要なマスクなどを備蓄しておけば、外出を減らして感染のリスクを下げられる。また親子ともに寝込んだときにも対応できる。
  勝田教授は「食料品ではイオン飲料のほか、レトルト食品や缶詰など。米やめん類は普段食べている物を買い増ししておくといいでしょう」と話している。

■持病のある人注意

  • インフルエンザが冬に流行するのはなぜですか。
  • 温度や湿度が低い環境がインフルエンザウイルスの増殖にとって都合がいいとの説があります。しかし高温多湿の熱帯地域ではインフルエンザが年間を通じて発生しており、それだけが原因だとは言い切れません。
  • 重症化のリスクが高いのはどんな人ですか。
  • 妊婦や慢性の病気がある人、赤ちゃんや小さな子どもはリスクが高いと考えられています。気を付けないといけないのは、ワクチンの優先接種対象になっていない人でも、リスクが低いわけではないという点です。何らかの持病のある人は、どう備えるべきか、かかりつけの医師に相談することをお勧めします。
  • 世界的流行はいつまで続くのですか。
  • 過去の新型インフルエンザの世界的流行のパターンを踏まえると、2〜3年続く可能性があります。流行には波があり、この冬はかからずに済んだとしても、次の流行の波で感染する可能性は十分にあります。今後いったん流行が収まったとしても、油断しないことが大切です。